2015年2月28日土曜日

2/28  キノコの学習会

菌類の多様性が支える生物多様性

2月28日(土) 14:00-16:00
於:里山情報館

服部力さん(森林総合研究所 森林微生物研究領域)を講師に迎えて菌類についての学習会を開催しました。

菌の種類数
 菌とよばれるもののうち、菌類はどれでしょうという話から、学習会はスタートです。
 菌類は、胞子をつくる、糸状である、先端が成長する、細胞外消化をする、細胞壁はキチン質、真核生物、鞭毛は1本、多糖類(グリコーゲンを貯蔵物質とする)などの特徴を持っている。
 既知の菌類の種類は、子嚢菌類6万4千種、担子菌類3万2千で、まだ名前が付けられていない種類を含めると、推定で150万種のもなり、昆虫についで種類が多い。
 地球上で生物の種類を考える上では、非常に大きな比重を占めていることが示された。

さまざまな菌のそれぞれの役割
 木材腐朽菌は木材を分解する機能をもつ。木材のセルロースとリグニンという他の生物が利用しにくい物質を分解することができ、腐朽菌のおかげで、ほかの生物は木材をエサとして利用することができるようになるなど物質循環のなかで大きな役割を果たしている。
 菌根菌は植物が栄養塩類や水分を吸収するのに役立っており、大部分の種類の植物が依存している。
 地衣類は菌類と藻類の共生体で、特に冷涼な場所、栄養塩類が乏しいといった極限環境で、特に重要な生産者になっている。
 植物病原菌は、植物の枯死や成長異常をもたらし、森林では親木の近くで幼木を育ちにくくさせるなど、生物多様性維持に関与している。菌の感染により、植物が異常成長することになり、生態系に特殊な環境を作り出す役割もある。
 昆虫との関係は、共生や共同作業による菌の感染、昆虫に寄生したり、反対に昆虫のエサとなったりなどがあげられる。
 菌同士の相互関係は、お互いに食べたり食べられたりという関係、木材の腐朽の段階に応じて菌相も遷移していく。
 生態系において、分解者という機能だけでなく、食う食われる、住処の提供など非常に多くの機能をもっている。

 服部さんの専門の木材腐朽菌に関する茨城県での調査によると、森林の植生タイプで、腐朽菌の種類も数も大きく異なり、ブナ・ミズナラ林はスギ林などに比べて種類が豊富であり、コナラ林は、ブナ・ミズナラ林でみられるような菌もみられる。
 腐朽菌は、寄生している木の種類ばかりではなく、生きている木か死んでいる木か、倒木の太さや、木の幹か枝か、材の中心(心材)か外側(偏材)かどうか、水分の量、さらには気候や、生物区など極めて多様な要素で決まる。
 このようなニッチ※の細分化により腐朽菌の多様性がもたらされている。
 1本の倒木から、森林、そして地球レベルでも、菌類の多様性の高さと役割の大きさに改めて驚嘆した、充実した面白い学習会でした。
by Moさん
【大池メールから転載】

※ニッチ=生物学では生態的地位を意味する。1つの種が利用する、あるまとまった範囲の環境要因のことととされる。(ウィキペディア)

若干語句の修正及び注の挿入などをさせていただきました。
by yamasanae


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